ミニバラ 病害虫マニュアル
花を育てるのに病害虫はつきもの。花を元気に綺麗に上手に咲かせるには、病害虫のことをよく知っておくことが大切です。



薬剤散布  基本的な考え方

1.  1回の散布で安心してはいけません。

バラにとって病害虫の対策はとても重要なことです。害虫はおもにハダニ・アブラムシ・ヨトウムシ。病気はうどん粉病、灰色カビ病、黒点病などがあげられます。

日々のチェックを心がけ、できるだけ早期に対処することが重要です。農薬を嫌う方も多くいらっしゃいますが、適正に使用すれば安全であるということは忘れないで欲しいと思います。

今は手軽なスプレータイプ、殺虫剤・殺菌剤混合タイプもありますので便利ですが、数種類くらいの農薬をローテーションで使用することをおすすめします。
 



 

病害虫は同じ薬ばかりかけていると次第に薬が効かなくなってきます。病害虫に農薬がしっかりかからなかったり、かかっていても致死量にいたらなかったなどが原因で、【農薬に対する抵抗性】がついてしまいます。その仕組みと、3種ローテーション効果とをあわせた図が下にあります。

 




 

農薬C散布後にA薬・B薬・C薬
全部に抵抗性を持った病害虫になるのでは?
 

大丈夫。病害虫はそんなに「おりこうさん」ではありません。最初のA薬にたいする抵抗性を忘れてしまいます。農薬C散布後にまだ病害虫がまだ残っているようでしたら、農薬Aを散布してあげるとほとんどの場合駆除できます。ただ、病害虫の駆除にはその発生初期の対処が一番。日々水をあげながらでも健康状態をチェックしてあげることが大切です。


 

農薬の使用法
 

最近は農薬も殺菌剤・殺虫剤混合の手軽なスプレータイプのものがいろいろありますね。ご使用に関して注意していただきたいのが、【かけすぎないこと】です。下図のように葉っぱ、株の全体に細かい霧状で薬剤がかかるようにします。葉っぱから滴り落ちてしまうような【つゆだく】ではかけすぎによる薬害発生に結びついてしまいます。
風のない午前中に、株から30センチ以上離して噴射させた薬剤の霧がまんべんなく上から降りかかるようなイメージで散布してあげましょう。もちろん農薬の使用に関しては、その取扱い方法などしっかり読んでからご使用くださいね。


 




 

ポイント

残ってしまった病気をそのまま放置すると、耐性を持つ病原菌へと変化してしまいますのでご注意ください。

 

ハダニ  早期発見・早期駆除が必要。

ハダニは非常に繁殖力が強く、ほかの株にもどんどん広がってしまうので、早期発見・早期駆除が重要になってきます。
 

ハダニって何?

体長は0.5mm程度で、葉裏に寄生します。高温乾燥を好み、夏から秋にかけて繁殖が旺盛になります。 ハダニはタマゴから成虫になり交尾をはじめるまで約10日〜2週間といわれています。そして毎日5個から10個のタマゴを生みます。ねずみ算ならぬハダニ算式に増え続け、気がつけば何万匹という大量になり大切なバラを傷めてしまいます。
 

発生時期

▼3〜10月

※4〜6月、9〜10月は特に注意!

症状

▼葉っぱが白くカスリ状になります。

葉裏に寄生し汁液を吸います。被害にあった葉っぱは写真のように白い細かな斑点が出て、数が増えるとカスリ状のような食害痕がみられます。ひどい場合にはクモの巣のような巣をつくり、やがて葉っぱは枯れ、悪化すると株自体も枯死してしまいます。
 


 

弱点

▼ハダニは水に弱い!

ハダニは水に弱いという弱点があります。定期的に流水で葉っぱの裏から洗い流してしまう方法や、バケツに水または薬剤を張り、鉢を逆さにして葉っぱを浸水する方法など、荒療治も必要かと思います。薬剤散布のほかにも、病害虫の弱点を突いてしっかり駆除をすることが重要です。


 

対処法

▼効果的なのは、「洗浄&薬剤ローテーション」

上で述べた洗浄法にプラスして、適切な薬剤散布が効果的です。ここで重要なのが、薬剤はタマゴには効果がないということ。1週間で卵が孵化するので、一度散布しただけではタマゴまで死にません。またすぐ孵化して被害が広がります。だからこそ、1週間に1回散布の薬剤ローテーションがより効果的なのです。

使用する薬剤




アブラムシ  じっくり観察。
 

アブラムシは新芽の柔らかい部分や花首などに群生しています。下のほうを見てみると白い脱皮した皮が落ちていますね。
 

アブラムシって何?

体長2〜4mm程度で、体色は様々。1匹では見過ごしがちで、群棲した状態で見かけられます。孵化したら10日で成虫になり条件次第で1日に10〜20匹くらいの子供を生みます。

 

発生時期

▼3〜10月

※4〜6月、9〜10月は特に注意!

症状

▼よ〜く見ると・・・!新芽や葉の裏に寄生

新芽や葉裏に寄生し植物の汁液を吸って、植物の生育を著しく悪くします。他のウィルス病を媒介し、また排泄物によってすす病が発生することがあります。
 


 

対処法

▼繁殖力が強いので、こまめにチェックしましょう。

  • 発生初期であれば早急に薬剤散布をして駆除します。
  • 被害が進み手がつけられなくなるほど大量発生してしまったら、被害部分は剪定して切り捨ててしまってから、 念のため薬剤散布をします。

使用する薬剤
 


 

ヨトウムシ  発生初期で駆除しよう。

親は蛾ですのでどこからともなく飛んできて勝手に卵を産み付けていきますので厄介ですね。
 

ヨトウムシって何?

ハスモンヨトウなど、夜行性で葉を食害する種類をヨトウムシといいます。ヨトウムシは夜盗虫といわれ、夜に盛んに活動する蛾の幼虫で、昼間は茂みなどに隠れています。ヨトウムシにはその種類もいろいろありますが、驚くほどの食欲であっという間に若い葉っぱを食べつくします。
 

発生時期

4〜6月・9〜10月

症状

▼葉っぱが透けてしまうほど、食べられてしまいます。

ヨトウムシは食欲旺盛で、被害が進行すると葉脈を残して葉肉部を食べつくされます。卵は葉の裏に産み付けられ、孵化すると群棲して食害します。
下の写真はおそらく孵化後3日〜4日目の写真です。葉っぱが透けてしまうほど食べられてしまっています。特にハスモンヨトウは群生しています。

 


 

対処法

▼孵化直後の群棲しているときに、防除するのがポイント!

  • 孵化直後で被害が軽微であれば薬剤散布やピンセットなどで取り除いてしまいましょう。
  • 被害が進み葉っぱがなくなってしまっているようであれば、被害部分は剪定して切り捨ててしまってから、念のため薬剤散布をします。

使用する薬剤



スリップス  夏の高温時に発生しやすい。

スリップス(アザミウマ)は4月から11月くらいにかけて発生する害虫ですが、気温が高いこの時期になるとより多く発生します。

スリップスって何?

体長1〜2mm程度の細長い虫です。花の中など、見つけにくいところに発生します。花が開きかけたときにつぼみの中に入り込み、花弁をなめるように樹液を吸います。
 

発生時期

▼4〜10月

※夏の高温乾燥時は特に注意!

症状

▼開花した花弁が茶色く汚くなってしまいます。

つぼみが開き始めると、花弁の隙間から侵入してきます。花弁の一部にシミができ、次第に茶色に変色していきます。
 


 

スリップスに特に注意が必要なのは黄色や白色、淡いピンクなど明るい色の花です。

対処法

▼こまめに花ガラを切り取りましょう!

  • つぼみや花弁の隙間に生息しているので、スプレー式などの薬剤がかかりにくく、駆除が大変です。浸透移行性といわれる薬剤を使用しましょう。(代表的なもの・・・オルトラン粒剤)

  • 浸透移行性薬剤とは・・・
    根っこから有効成分を植物体内に取り込み、樹液を吸収した害虫を駆除をする手軽な農薬です。
  • 植物体内に成分が浸透するまで、4〜6日程度かかるため、発見と同時にスプレー式の農薬も、念のため散布しておくと良いでしょう。
  • 被害が出ている花は切り取ってビニール袋に入れて口を縛り、生ごみとして処分します。夏の花は開花期も短いですので、被害の出ていそうな花は思い切って処分し、その後咲いてくる株にオルトランを散布する・・・これがベストの対策でしょう。
使用する薬剤
  • オルトランやベストガードなどが有効。
    ※花が汚れるので展着剤は入れないで散布しましょう。
 


うどん粉病  正しい薬剤散布で、うどん粉病にさよなら。

一部の葉っぱが真っ白に!葉っぱも波打ったように変形している!これは典型的なうどん粉病の症状です。

うどん粉病って何?
胞子が風で運ばれ、若い葉や枝、花首、蕾に寄生し、多くの植物に発生する病気。比較的高温で湿度が低いと繁殖しやすくなるので、特に風が通るところなどでは多発します。逆に雨が続くようなときには発生が少なくなります。

 

発生時期

▼4〜11月

※5〜7月、9〜10月は特に注意

症状

▼花首や若葉に発生し、真っ白な粉をふいたようになります。

もやもやした白い小斑点が次第に拡大するなどの症状が葉や花首に発生します。花首や若葉に発生し、真っ白な粉をふいたようになります。葉っぱは巻いてしまい波打ったようなり、花首も曲がってしまいます。葉の表面が覆われると光合成を阻害し、葉から栄養を吸収されるので生育不良になり、花が咲かなくなります。ひどい場合には枯死するなどの被害があります。
 


 

対処法

▼効果的なのは、「薬剤のローテーション」と「霧吹きでの水散布」

  • チッ素過多により植物体が軟弱化している場合なども発生しやすくなるので肥培管理を適切にしてバランスの良い肥料やりを心がけます。
  • 株から20〜30cmほど離したところから薬剤散布します。患部だけでなく、株全体にしっかり散布しましょう。


 

1回の薬剤散布でうどん粉病は治りません。また1週間後くらいには散布をします。その際は今回とは別の薬剤を使用します。また、薬剤散布の間の晴れた日には、霧吹きで水をかけて、うどん粉病の進行を少しでも食い止めましょう。

使用する薬剤
ミラネシン、オルトランC
薬剤散布も霧吹きでの水散布も、できるだけ晴れた午前中にすると効果的です。散布した薬剤がその日のうちに乾かないと、逆に灰色カビ病(ボトリチス)やベト病といった違う病気を誘発してしまいます。
 


ボトリチス(灰色カビ)病  剪定後にご注意!

剪定切り口や、茎と土の接点から菌が侵入し、茶色く変色。ひどいとバラが枯れてしまいます。
 

ボトリチス(灰色カビ)病って何?

低温多湿を好むので春先〜梅雨、秋口〜冬の初め頃の気温がやや低く湿度の高い、雨が多くて日照が不足しがちな時期に発生が多くなります。花壇などでは春先〜梅雨の雨が続くときに発病しやすく、花弁が腐ってしまいます。
 

発生時期

3〜12月

症状

▼灰色のカビに覆われます。

茎葉が溶けるように腐り、さらに病気が進行すると灰色のカビに覆われます。花では花弁に水滴がにじんだ様な跡がつきます。病気が進行すると花が褐色になり腐ってきて、やがて灰色のカビに覆われます。

対処法

▼ボトリチス病の発生しない環境は風通しが良く湿気の少ない場所!

湿度を好むので水のやり過ぎに注意し、できるだけ風通しの良い湿気の少ない場所で管理します。枯れた部分にも病原菌が残っているので、なるべく取り除いてください。


株元(茎と土の接点)から発病してしまった場合
 


 

この場合、復活はほとんど無理な状況です。隣の株へ病気が転移しないよう、地上部は全て切ってしまいましょう。

詳しくは【薬剤散布の基本的考え方】をご参照ください。

使用する薬剤
  • ダコニールなどが有効